発明の定義

発明の定義規定

「発明」という概念の定義をすることは難しく、各国の特許法では定義規定を設けているものも少なく、学説判例によってその内容を明らかにしています。
例えば、米国特許法では「発明とは、発明又は発見」とされて、具体的な定義はされていません。
また、欧州特許条約第52条では、「発明ではないもの」を列挙しているのみで、定義付けはされていません。

とはいえ、発明の定義は特許法における基本問題ですので、特許法では法文上明瞭なものとして争いを少なくしようという趣旨から、以下のように定められています。

特許法第2条第1項 (定義)
この法律で「発明」とは、自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のものをいう。

以下では、この条文の文言について解説します。

自然法則を利用した

「自然法則」とは、自然界において経験で見出される法則をいい、「利用」とは何らかの自然法則が介在して、一定の技術的作用効果が得ていることを意味しています。
また、単なる精神活動・純然たる学問上の法則・人為的な取り決め等は除外すべきものと解釈されています。

たとえば、欧文文字、数字、記号を適当に組み合わせて電報用の暗号を作成する方法については、「自然法則を利用した」ものではないので特許法にいう発明とはいい難いという趣旨の判決があります。

他にも、自然法則そのものや、自然法則に反する永久機関等は、「自然法則を利用」したものではないので発明には該当しません。

技術的思想

技術

「技術」とは一定の目的を達成するための具体的手段であって、他人に伝達できる客観性、実施可能性及び反復可能性があるものをいいます。

一般に技術というと、印刷技術・情報技術・投球技術等の様々な技術が含まれます。
印刷技術や情報技術は「自然法則を利用した」もので、特許法の「技術」にあたり発明といえます。
しかし、投球技術等は個人の熟練によるもので、他人に伝達できる客観性をもたないので「技術」にはあたりません。

思想

「思想」とは、抽象的な観念又は概念をいい、具体的な形態と対立するものであると考えられているが、目的を達成するための手段としての具体性も必要とされています。
例えば、絵画や彫刻のような、具体的な目的達成の手段ではない単なる美的創造物は「思想」にはあたりません。

創作

「創作」とは、新しさを有し、作り出したものを指します。

新しさ

ここでいう「新しさ」は、29条1項及び2項で規定される、発明の新規性及び進歩性とは区別されています。
29条の新規性及び進歩性は特許出願時を基準に客観的なものでなければなりません。それに対して「創作」としての新しさについては、発明時を基準として考えられるもので、発明者が主観的に新しいと意識したものという程度で足ります。

作り出したもの

「創作」は発見とは異なり、自然人による精神活動を通じて、新たに何かを作り出すことを指します。
例えば、天然にある微生物を単に発見したものや、業として利用できないものは発明に該当しないとされています。
また、物に係る用途の発見については、「技術思想の創作として高度のものと評価されるか否かの観点から判断することが不可欠となる」と判事された裁判例があります。(スーパーオキサイドアニオン分解剤事件)

高度のもの

「高度」性の意義としては、主として実用新案法における考案(実用新案法2条1項)との差異を表すことにあります。

現行法においては実用新案法における考案も発明と同様に、自然法則を利用した技術的思想の創作であるとされています。しかし、「発明」は考案に含まれる部分のうち技術水準の低い裾の部分は包含しないという趣旨である。ただ、この高度性も発明の成立要件の1つであって、特許要件としてのインベンティブ・ステップを示すものではないとされています。