科学的勉強法

今回は科学的に効率の良い勉強法について実験も紹介しながらまとめていきます。

これから先も、新しい教材が次々と出版され、様々な勉強法が出てくるとは思いますが、ここで書く内容は実験に基づく科学的根拠のある勉強法ですので、これから先も変わらない形で通用すると思います。

集中学習と分散学習とは?

学習には2種類の方法があり、それは「集中学習」と「分散学習」です。

それぞれ、ざっくり説明をすると、

集中学習→理解してすぐに同じかよく似た課題の学習を何度も続けて行う
分散学習→最初に理解してから時間間隔を空けて復習する
と、このようになります。

どちらがより効果的だとおもいますか?
この答えはもう科学的に出ていて、そのことを具体的な実験を紹介しながら説明していきますね。

エピングハウスの忘却曲線から始まる分散学習効果の証明

集中学習するよりも分散学習をすると、効率が良く、テストで思い出しやすいことは研究でも広く認められており、この効果を分散効果と言います。
この分散効果の存在は非常に古くから知られており、最初に実験で証明されたのはエピングハウスのランダムな文字列を記憶させる実験です(Ebbinghaus,1913)。この結果はエピングハウスの忘却曲線として広く知られています。
これ以来、分散効果については、単語の暗記をはじめ様々な分野で確認されており、しかもその効果は高く、長期記憶化するとされています。

例えば、

  • 単語(Glenberg&Lehmann,1980、Kornel, 2009、Karpickeら2008)
  • テキスト(Glover&Corkill, 1987)
  • 足し算(Ruch, 1928)
  • 数学の公式(Gay, 1973)
  • 理科の専門用語の意味(Reynolds&Glaser, 1964)

などの幅広い科目・学習内容において、幅広く認められています。
分散学習による、分散効果がすでにここまで古くから証明されているのに対して、実際の教育現場では、多くの生徒や教師に分散学習の有効性が認識されておらず、集中学習の方が有効だと考えられています。

Zechmeister&Shaughnessy(1980)は、生徒は、分散学習よりも集中学習の方が効果的だと信じているという調査結果を報告しており、あとで紹介する実験1-2でも集中学習をしたグループのほうが有効だと感じていました。

また、Rothkoph(1963)は、学習方法についてのプロであるはずの教師ですら、分散して繰り返し説明している教科書よりも、集中して繰り返し説明が載っている教科書の方が効果的だと評価してしまうという結果を報告しています。

ここからはもう少し新しい実験を具体的に見ていきます。

【実験】集中学習は長期記憶のために有効か?

Rohrerら(2005)は、学生130名を下記の2つのグループに分けて、国名と都市(Japan-Tokyoなど)の組み合わせを覚える学習をさせました。
①集中学習しないグループ
②①のグループの4倍の時間の学習を行うグループ

結果はどうなったでしょうか?

1週間後に再テストすると、予想通り4倍勉強した②のグループが1.8倍程のスコアを残していたのに対して、3週間後に再テストを行うと、驚くことに、2つのグループのスコアにほぼ差はありませんでした。

したがって、集中学習には限界があり、長期記憶にするためには集中学習は有効ではありません。
受験や資格試験では長期記憶にする必要があるので、集中学習では効果的ではないことになります。

ではどのような学習方法が有効なのでしょうか?

ここでヒントになるのが英単語の暗記カードを覚える実験です。

【実験】記憶の定着には分散学習が効果的?

Kornel(2009)の学生を2つのグループに分けた実験で、それぞれ
グループ1: 20枚のカードを2回繰り返すことを4日間行う
グループ2: 5枚のカードを8回繰り返すことを4日間行う
とし、6日目に単語テストと、テストの前に点数予想のアンケートを行いました。
どちらのグループも1日に見る暗記カードの枚数は変わらず、勉強量に差はありません。

結果はどうなったでしょうか?

テスト前のアンケートでは、グループ2の方が4倍ほど良いスコアをとれる自信を持っていました。
しかし、実際の結果では、グループ1のスコアはグループ2の約2倍でした。
感覚的にもグループ2のようにコツコツ覚えていく勉強法がよりよいようにも思えますが、実際は一度に多くの単語を学習すると効率がいいのです。

つまり、全単語を一定期間おいて覚える分散学習をすることで、1つ1つのカードに出会う間隔を長くなるようにすることが英単語を暗記するのに有効だということになります。

しかし、多くの人がこの学習方法を実行できない理由としては、直感的には集中学習の効果が高いように見えてしまうことが問題です。皆さんは実験結果をみて分散効果を知ったと思いますので、実験を参考にして分散学習を試してみてください。

では、一定期間とはどれくらいの長さでしょうか。
入試や資格試験のように、学習・復習をしなければならない範囲がとても広い場合はテスト直前にすべての範囲を復習することは不可能です。
では、効率的に復習をするために、どのような計画を立てるとよいのでしょうか?

この疑問に答えてくれる実験(次の実験1-3)があります。アメリカの研究グループ(Vulら)が2008年に発表した実験です。

【実験】復習はいつすればいいのか? -5:1の法則-

Vulら(2008)の実験で、学習からテストまでの期間と、学習から復習までの期間の組み合わせを、実験参加者1354名に試しスコアを調査しました。

結果としては、学習してすぐに復習する集中学習は効果がなく、最も効果的だったのは2つの期間の比率が5:1のときでした。
例えば、60日後が試験であれば12日後に復習するといいことになります。
ただ、これは多少前後しても効果はほとんど変わらなかったためある程度の目安程度でいいと思われます。先程の例であれば8-14日後に復習するといいでしょう。

また、その後の復習に関してはこのまま一定期間をおいてやるのが効率的であることも実験で分かっています。
ですので、5:1の法則に従うとテストまでに6回ほど繰り返して学習すると理想的ということになります。6回繰り返すと思うとかなり難しそうですが、集中学習は効果的でないので1回の学習量を減らして繰り返しやるようにしてください。

これらの3つ以外にも分散効果に関する実験があるので、結果だけ紹介したいと思います。

他の実験

Underwood(1970)によれば分散学習と集中学習の効果の差は、復習の反復回数が増すほど広がるとされていますので、学習方法によって学力の差は広がり続けることになります。
さらに、テストまでの時間が長いほど、集中学習と分散学習の効果の差は顕著となり、その効は8年もの長い間存続することも証明されています(Glenberg&Lehmann,1980、Bahrick&Phelps,1987)。
受験でも資格試験でもテストは少なくとも1ヶ月以上先にあることが多く、集中学習の効果は1週間しかもたないことから考えても、分散学習は効果的といえますね。

テストを受けると学力が上がる?

【実験】どのようにテストの復習をすればよいのか

これはKarpickeら(2008)の実験で、実験者を4つのグループに分けてスワヒリ語の学習をまずし、その後小テストと見るだけの復習を行い、最終テストの結果と総勉強時間を調査しました。
グループ1: 小テスト後、全単語を復習し再テストを行う
グループ2: 小テスト後、間違えた単語のみ復習し、全単語再テストする
グループ3: 小テスト後、全単語の復習を行うが、間違えた単語のみ再テストする
グループ4: 小テスト後、間違った単語のみ復習と再テストを行う
間違った単語は復習しないと点数は伸びないので、どのグループも少なくとも、間違った単語のみの復習と再テストは行っています。

すると結果は下表1のようになりました。

グラフ

表1 グループごとの勉強時間とスコア

復習するならテストの方が効果的

グループ1と2を比べてみると勉強時間は差があるにもかかわらずスコアは同じになっています。テスト量が同じであればスコアは変わらず正解している問題の復習はほとんど効果がないことがわかります。また、グループ2とグループ3を比較すると、グループ2とほぼ同じくらい勉強時間がかかっているがテストを間違えた問題しかしていないグループ3は、グループ2の約2分の1のスコアしか取れていません。

つまり、見るだけの復習よりも小テストに労力を費やす方が、同じ時間だけ勉強する場合よりも成果が出るのです。
教科書や参考書などを読みインプットするだけではほとんど効果がなく、小テストを利用して自分でアウトプットをする復習方法こそが、最も効率的で点数に結びつく方法なのです。

グループ4に関してはよく効率的な勉強として紹介されているのをみますが、たしかに勉強時間はかかりませんが、その分点数も伸びない勉強法で、科学的に質の悪い勉強法であると言えるでしょう。

一問一答や、問題集の効率のいい学習法

小テストに近い教材として、一問一答や、選択式の問題集があります。いままでの実験結果からしても、これらの教材は効率がいいものですから、この使い方を例としてあげます。

まずは1周目からです。
普通の受験生は、この1周目に多くの時間をかけてしまいますが、ここで時間をかけてはいけません。1つ1つ問題を解き、毎回正解不正解を確認し、全ての解説を読むから時間がかかってしまうのです。

数ページの問題を、時間を決めて全部解いてから答え合わせするとずいぶん早く終わります。終わったら正誤のチェックをします。
正解している問題は今の感覚で答えを出せるので、試験でその問題が出た場合も、すでに正解できる可能性が十分あるので解説を見る必要はありません。
間違えた問題の解説は100%効果のある勉強なので解説を見ておきます。

【実験】数ページを一気にやるべき理由

Pycら(2009)の129名にスワヒリ語の暗記をさせる実験で、再度単語を復習するときの間隔が6分と1分の場合を比較しました。

実験の結果は、小テストの間隔が6分の方が最終テストの結果がよいことがわかり成績が6割程度であったのに対し、小テストの間隔が1分のときは、なんと、最終テストはほぼ0点になってしまいました。
勉強方法の条件が同じでも、小テストの間隔が1分と6分という違いのみで、最終的な結果は大違いです。さらに、小テストで5回程度正解すれば、それ以上小テストをしても、ほとんど効果がないことも判明しました。
ですので、数ページの時間を決めてまとめてやると、再度見直すまでの時間がより開くので効果的だといえます。

1ページあたりの量は科目や問題集によってまちまちだとは思うのですが、解答20分・解説読み5分程度がちょうどいいです。この合計25分(20+5)という時間はポモドーロテクニックに基づいている時間です。

ポモドーロテクニックとは

1992年にFrancesco Cirilloが考案した集中術で、やり方は非常に簡単です。
「25分集中して5分休憩」を1セットとします。4セット勉強したら、1度15分程度の長めの休憩を取ります。これをひたすら繰り返すのが、ポモドーロテクニックです。
集中力が25分程度しかもたないことは、アメリカの心理学者であるライリーが証明しており、25分以上続けて本を読んでも、本の内容があまり記憶に残らないことが分かっています。
2周目以降
もう一度、1ページずつ時間を決めて全部解いてから答え合わせをし、間違った問題のみ解説を読みます(なるべくポモドーロテクニックを用いると効果的です)。とくに1周目とやり方は変わりません。
小テストで5回程度正解すれば、それ以上小テストをしてもほとんど効果がないことは、先程説明した通りなので、4,5回正解した問題はもう繰り返す必要はありません。

1冊にここまで時間をかけてよいのか

「1冊だけやっても全然足りないよ」なんて言うような人は、その1冊をまったく勉強出来ていません。長期記憶にするためには分散学習が必要であり、分散学習は間をあける分時間がかかるからです。

「これだけで足りますか?」みたいな質問は、実際にその1冊をやりきってからするようにしましょう。そうすれば、そんな質問が無駄だということが実感できます。
実際は、試験までにできることは限られており、色々な教材に手を出しまくっている余裕など、本当は全くないのです。
ですので、1冊をしっかり分散学習してください。
私も、大学受験でも資格試験でも1つの分野で複数の教材は使いませんでした(個別の勉強法はまた後日書いていこうと思っています)。

ちなみに、もし答えが別冊の教科書であれば、ページをバラバラにしてしまうとよりよい分散学習が出来ます。過去問などは最初から問題が分野ごとでなくばらばらに並んでいるので効果的だといえます。

例えば、「大学入試センター試験」「宅建士試験」「司法試験の短答式」のような、多肢選択式タイプの過去問を使って学習をするとき、みなさんはどのように答え合わせをしているでしょうか?

これは、テストの経験を積むという点でも、分散学習という点でも1回分全て解いてから答え合わせをすると効果的です。これはここまで読んでいる皆さんにはもう分かっていただいていると思いますが、より直接的な実験があるので紹介したいと思います。

【実験】過去問の答え合わせはいつするか?

72名のアメリカ人学生は歴史に関する多肢選択式のテストをして、このテストのその答え合わせの仕方や、小テストをやるかやらないかの違いにより、4グループに分けられました。
グループ1: テストなし
グループ2: テストあり、答え合わせなし
グループ3: テストを1問ごとに、答え合わせ
グループ4: テスト後、まとめて答え合わせ
すると結果は下表2のようになりました(Butler& Roediger, 2008)。

グラフ

表2 グループごとの最終テスト得点率

グループ2は答え合わせをしていないのにもかかわらず、グループ1の3倍ほどの得点を取っています。驚くべきことに、テスト効果は答え合わせなしでも効果を発揮しています。
また、グループ3とグループ4を比較すると、1問ごとの答え合わせよりも、まとめて問題を解いてから答え合わせをするとより効果があることがわかります。

また、Metcalfeら(2009)の、テストが終わってからの答え合わせのタイミングについての実験によると、最終テストの結果が「すぐに答え合わせした」グループよりも、「あとで答え合わせをしたグループ」が高くなりました。ですので、過去問を解き終わって疲れたらしっかり休んだほうがいいことがわかります。

勉強する順番で効果が変わる?

例えば、歴代総理大臣や江戸幕府の将軍の名前をすべて覚えているひとはあまりいないですよね。ですが、初代総理大臣が伊藤博文であることや、今の総理大臣が安倍晋三であることは多くの人が覚えていますよね。江戸幕府の将軍についても同様だと思います。

実際、アメリカの学生254名へのアンケートでアメリカ人に大統領の名前を聞くと、初代大統領のジョージ・ワシントンや、今のバラク・オバマ大統領の記憶率が最も高かったというデータもあります。これを系列位置効果と呼びます。
ただこれらは、最初と最後に関しては歴史的重要性が高かったり、最近のニュースで見るなど、学習量や学習のタイミングが違うからだというようにも思えます。

ここで、学習量もタイミングも同じはずの賛美歌を用いた実験があります。

【実験】系列位置効果は勉強量によるものではないのか?

ある宗派では、歌詞が6番まである賛美歌を、毎回すべて通して歌うことになっており、この宗派の人たちにとっては、歌った回数やタイミングは歌詞の1番でも6番でも同じということになります。
ここで、この賛美歌をこの宗派の人に並び替えてもらうという実験を行いました。
すると、途中の歌詞よりも、最初と最後の歌詞で高いスコアが出ました。つまり、たとえ勉強量が同じものについても系列位置効果があることを意味しています。

すると、勉強においても最初と最後を数多く作ることが効果的だということがわかります。
そのために有効なのが、先程紹介したポモドーロテクニックです。25分毎に区切るので最初と最後が多く生まれやすくなり記憶への定着率が上がります。

テスト本番で緊張しない方法

プレッシャーで頭の中が真っ白になっているときというのは、「失敗したらどうしよう」などの不安が脳のワーキングメモリをいっぱいにしてしまうことが原因であることが分かっています。

ワーキングメモリとは

ワーキングメモリは、日本語では作業記憶や作動記憶などと呼ばれるもので、少しの間だけ脳の中で情報を覚えておき、それらを同時に処理する際に用いられる能力になります。
私たちが考えるときも動くときも基本的な役割を果たしてくれる能力ですが、ワーキングメモリは複雑な短期記憶システムでもあり、論理的思考や複雑な計算などにも使われます。

ワーキングメモリにはこのような力があるので、本番のテストでこの機能が停止してしまうと大変ですよね。
ワーキングメモリを強化するには、「姿勢をよくするように心がける」などすると効果があることは分かっています。しかし、Sianら(2005)の実験で、本番のプレッシャーに対する耐性はワーキングメモリの処理能力に関係ないどころか、ワーキングメモリの処理能力が高いほどパフォーマンスが下がってしまうことが分かっています。

本番でワーキングメモリを整理する方法

ワーキングメモリを整理するためのテスト中にもできる方法があります。つまり、必要なのは紙とペンだけです。

その方法とは、今頭の中に引っかかっている不安を「すべて書き出す」ことです。
誰が見るわけでもないので、深く考えずに自身の頭の中にある不安を紙にガリガリ書いてみてください。

そもそも「紙に書く」こと自体にストレス解消やリラックス効果があるので、とりあえず書いてみましょう。これは前日の夜でも、テスト当日でもいつでも使える方法です。
すると、頭の中に中でひっかかってワーキングメモリを占領している不安を外に追い出すことができ、テストに集中できるようになります。

効率的勉強法7ポイントまとめ

① 分散学習で長期記憶になり効果的
② 復習は5:1の法則
③ テストを受けると学力が向上する
④ テストの答え合わせは後でまとめてやる
⑤ 最初と最後は記憶に残りやすい
⑥ 25分で区切り5分休憩(ポモドーロテクニック)
⑦ 緊張したら不安を紙に書き出す

引用文献一覧